「起承転結」型の話法では、「説得」するのに時間が掛かる。しかも「話」を最後まで聞いて貰えない


「お客様」に「商品」を販売しようとするときに、一番陥りやすいのが、何故かこの「起承転結」にこだわる方が多いということである。

※起承転結(きしょうてんけつ)とは、物事の展開や物語の文章などにおける四段構成を表す概念。起承転結の典型的な例として4コマ漫画の構成などがある。

今までの学校教育における学習から「作文」「短編小説」などを書かされた経験があると思うが、それが「刷り込まれて」いるためかもしれない。

「買わせるため」に必死になると「演繹的販売トーク」に偏る


もう一つ陥りやすいことが「演繹(えんえき)的論法」での展開である。

演繹(えんえき)は、一般的・普遍的な前提から、より個別的・特殊的な結論を得る推論方法である。対義語は帰納。

演繹の代表例として三段論法がある。 「人は必ず死ぬ」という大前提、「ソクラテスは人である」という小前提から「ソクラテスは必ず死ぬ」という結論を導き出す。この例のように二つの前提から結論を導き出す演繹を三段論法という。演繹においては前提が真であれば、結論も真となる。

ここで、「ソクラテス」の代わりに「私」を入れても正しい演繹となる。演繹による必然性とは前提には依存しておらず、前提を仮に認めるとすれば、必然的に結論が導かれるという形になってあらわれる。

販売の現場においての具体例として簡単にいえば、

「これは○○ですよね」「××も○○なんですよね」「だったら○○じゃないですか」「ということは、これは○○という事なんだから、そうなると、この商品は必要ですよね」

という販売手法である。販売上でよく用いられている話法である。

→ここでは「演繹(えんえき)的販売トーク」と呼ぶこととする。

「販売」は「帰納的」論法での展開の方が効果的である


「演繹(えんえき)的販売トーク」は、ある商品を説明していて、お客様が購入するかどうかの判断を迷われている時には、かなり「有効」な手段ではあるが、場合によっては、所謂(いわゆる)「押しつけがましい」、「販売員の論法にハマってしまった」、「なんか、態度が気に食わない」ということをお客様に感じさせてしまうというデメリットがある。→※「心理的リアクタンス」

それよりも、そもそも「販売」は「商品」を「見せて」「使ってみて」「納得」させるという手法なので「演繹的」な展開ではない。

簡単に言えば「商品」は既に『完成品』であり、販売する都度、その「商品」に対して「機能」を追加したり、変更したりという事は不可能である。

「商品」の「機能」を「紹介」することによって、それを聞いている、見ている「お客様」に「うちでも使えそう」或いは「これって、便利ね~」と思わせるやり方である。

心理的リアクタンスとは、人は生来的に自分の行動や選択を自分で決めたいという欲求 があるが、それを他人から強制されたりすると、それが自分にとってプラスの提案であっても無意識的に反発的な行動をとってしまうということ。この反発を「ブーメラン効果」という。

帰納(きのう)とは、個別的・特殊的な事例から一般的・普遍的な規則法則を見出そうとする推論方法のこと。対義語は演繹。

演繹で用いられている例と帰納を対比させるとこうなる。「人であるソクラテスは死んだ。人であるプラトンは死んだ。人であるアリストテレスは死んだ。したがって人は全て死ぬ」。つまり、帰納は一般化に基づく。

とすると、店頭における「販売」は「帰納(きのう)的販売話法」ということになるのである。

ここでいう「個別的・特殊的事例」=「商品の機能・性能」のことであり、

普遍的(どこにでも当てはまる性質を有している)な「法則・規則」=多数の人が「使って便利」「こんな機能あるといいな」「こういう機能があるのであれば、欲しいと思うな~」というように感じさせることである。

ただし「帰納的販売話法」にも限界があるといえる。以下の「演繹」と「帰納」について述べられた一文を読めば明快である。

演繹においては前提が真であれば結論も必然的に真であるが、帰納においては前提が真であるからといって結論が真であることは保証されない

簡単に言うと「実演」で「商品の機能・性能」を訴(そ)求(きゅう)(広告や販売で消費者の購買意欲に働きかけること)しても「うちはそんな機能いらない」「別に凄いと思わない」という『反応』が返ってくる場合も当然ありえるのである。

「帰納的販売話法」で「実演・商品訴求」をし、最後に「演繹的販売話法」で「商品購入」のご決断を頂く、というのが、実演販売の手法といえる。ただし、「DIY」系の商品など「特殊な一部ユーザー向け商材」に関していえば、「演繹的販売話法」を用いた「問題提起」で「商品」を使いそうな「お客様」を集客し、「帰納的販売話法」で「実演・商品訴求」をし、最後に「演繹的販売話法」で「商品購入」のご決断を頂くという流れとなる。

 

これらをまとめると、

  • 『集客』(「キャッチー」なフレーズでお客様の関心を引き寄せる)
  • 『結論』(商品機能)
  • 『商品を使った実演や試食』(興味を引き付ける)
  • 『商品機能の説明』
  • 『実際の生活シーンでの有用性』
  • 『個別販売』(購入しようとされるお客様、興味を持たれたお客様に対する一対一の接客)
  • 『商品が生活者にとって必要不可欠であることを訴求』
  • 『競合メーカー商品』『お客様が購入検討をされている他の商品』との相違や優位点を客観的に訴求
  • 『価格訴求』(価格の提示・競合他社に対する価格対比等をお知らせする)
  • 『購入特典の紹介』(景品・割引・特典・プレゼントで「限定感」を与え「ご決断」を頂く)

という流れになる。